質的研究において、半構造化面接は広く使われている方法の一つです。半構造化面接は、主題に沿った質問リストを用意しつつ、必要に応じて追加質問を行うことができるため、質的研究の目的に合わせたデータ収集が可能です。
半構造化面接の特徴について
以下に、半構造化面接の質的研究における具体的な特徴をいくつか挙げます。
- 主題に合わせた質問リストを作成する 半構造化面接では、主題に合わせた質問リストを作成します。質問リストには、研究の目的に沿ったテーマや項目が含まれます。質問リストは、研究者によって作成され、テーマや項目は研究の目的や研究問題に基づいて決定されます。
- 必要に応じて追加質問を行うことができる 半構造化面接では、必要に応じて追加質問を行うことができます。これは、応答者の発言や回答内容に応じて、研究者が自由に質問を追加できることを意味します。このように、追加質問を行うことで、応答者がより詳細な情報を提供することが期待できます。
- 個人的な経験や見解を反映することができる 半構造化面接では、研究者が個人的な経験や見解を反映した質問を行うことができます。このような質問は、応答者の深い洞察を引き出すことができ、研究者の洞察を深めることができます。
- 質問の順序を変えることができる 半構造化面接では、質問の順序を変更することができます。研究者は、研究の目的や応答者の回答内容に合わせて、質問の順序を変更することができます。このように、研究者は、研究の目的に応じてデータを集めることができます。
質的研究における半構造化面接の歴史
質的研究における半構造化面接は、1970年代に初めて提唱されました。当時の質的研究では、非構造化面接が一般的でした。しかし、非構造化面接は、応答者の発言に沿った質問を行うため、研究者の主観が入りやすく、応答者の発言を引き出しにくいという問題がありました。
そこで、半構造化面接が提唱されました。半構造化面接は、主題に合わせた質問リストを作成しつつ、必要に応じて追加質問を行うことができます。この方法により、研究者の主観が入りにくく、応答者の発言を引き出しやすくなります。
半構造化面接は、当初は医療分野において使われ始めました。しかし、その後、教育、社会学、心理学、経営学などの分野にも広がり、現在では広く使われる質的研究の手法の一つとして定着しています。
近年では、半構造化面接のデータ収集手法を改良し、より効果的な分析手法を開発するための研究も進んでいます。また、インタビューの録音やテキスト化などの技術革新により、半構造化面接のデータ収集と分析は、より効率的に行うことが可能になってきています。
半構造化面接の質問票の作り方
質的研究における半構造化面接の質問票の作り方については、以下のような手順があります。
- 研究の目的と質問のテーマを決定する 半構造化面接の質問票を作成する前に、研究の目的と質問のテーマを決定する必要があります。研究の目的やテーマに基づいて、質問の項目や質問の種類を決定します。
- 質問の項目を洗い出す 研究の目的とテーマが決まったら、質問の項目を洗い出します。項目は、研究の目的に応じて決定します。項目は、例えば、研究対象となる人々の背景、彼らの意見や経験、社会的・文化的な要因などが含まれることがあります。
- 各項目に対する質問を作成する 各項目に対して、質問を作成します。質問は、研究の目的やテーマに応じて作成します。また、質問は、簡潔で明確な言葉で表現し、研究対象となる人々が理解しやすいようにする必要があります。さらに、質問は、オープン型、クローズド型、スケール型などの種類があり、研究の目的やテーマに合わせて適切な質問の種類を選択する必要があります。
- 質問の順序を決定する 質問を作成したら、質問の順序を決定します。質問の順序は、研究の目的やテーマに応じて決定します。質問の順序は、研究対象となる人々が回答しやすいように考慮する必要があります。また、同じテーマに関する質問はまとめて、スムーズな質問の流れを作ることができます。
- 質問票を試行し、改善する 質問票を作成したら、試行して改善を繰り返すことが必要です。研究対象となる人々に実際に半構造化面接を行い、質問についてのフィードバックを得ることが重要です。
半構造化面接に要する時間について
質的研究における半構造化面接に要する時間は、研究の目的やデザイン、研究対象となる人々の数などによって異なります。しかし、一般的には、1人あたり30分から60分程度の時間を要します。
この時間は、主題に合わせた質問リストを作成する時間、研究対象となる人々を選ぶ時間、実際の面接時間、面接後に録音やテキスト化を行う時間などが含まれます。また、必要に応じて、複数回の面接が必要になることもあります。
ただし、研究対象となる人々が限られている場合や、面接の回答時間を短くするなどの方法で、短い時間で実施することも可能です。しかし、研究の目的に合わせた質的データを収集するためには、適切な時間を確保することが重要です。
半構造化面接のメリット
質的研究における半構造化面接のメリットは、以下のように多岐に渡ります。
- 柔軟性がある 半構造化面接では、事前に質問リストを作成することで、研究の目的に合わせた質問をすることができます。また、必要に応じて追加質問を行うこともできます。そのため、研究対象となる人々が自由に意見を述べることができるため、より深い洞察を得ることができます。
- 豊富な情報を収集できる 半構造化面接は、オープン型質問を行うことができます。これにより、研究対象となる人々から豊富な情報を収集することができます。また、追加質問を行うことで、より詳細な情報を得ることができます。
- 研究対象となる人々の主観を引き出すことができる 半構造化面接は、研究対象となる人々の主観を引き出すことができます。オープン型質問を行うことで、研究対象となる人々が自分の意見や経験を自由に話すことができます。また、研究者が追加質問を行うことで、より深い洞察を得ることができます。
- 質問の再現性が高い 半構造化面接は、研究対象となる人々に同じ質問をすることができるため、質問の再現性が高いというメリットがあります。このため、研究対象となる人々から得られる情報の信頼性が高くなります。
- 研究者の主観が最小限に抑えられる 半構造化面接は、事前に質問リストを作成することで、研究者の主観を最小限に抑えることができます。また、追加質問を行うことで、研究対象となる人々が自由に発言できるため、研究者の主観が入りにくいというメリットがあります。
半構造化面接のデメリット
質的研究における半構造化面接のデメリットは、以下のようになります。
- 調査対象者の数に制限がある 半構造化面接は、インタビュー形式で実施されるため、調査対象者が限られます。また、研究者が時間的に限られている場合、十分な数の調査対象者を取り上げることができない可能性があります。
- 研究者の主観が入りやすい 半構造化面接は、研究者が事前に質問リストを作成するため、研究者の主観が入りやすいというデメリットがあります。また、追加質問を行うことで、研究者の主観が反映される可能性があるため、研究者が客観的に分析することが必要です。
- 分析に時間がかかる 半構造化面接は、インタビュー後の録音やテキスト化、データの整理など、分析に時間がかかるというデメリットがあります。また、質的データの分析は、研究者の主観が入りやすく、複雑な分析手法が必要な場合があります。
- 回答者の負担が大きい 半構造化面接は、時間がかかり、質問内容によっては回答者の負担が大きいというデメリットがあります。また、研究対象となる人々がインタビューに不慣れな場合、回答が適切に得られない可能性があります。
- 偏りが生じる可能性がある 半構造化面接は、研究者が質問リストを作成するため、研究者の主観によって質問内容が決まります。そのため、研究者の偏りによって、調査結果に偏りが生じる可能性があります。
以上のように、半構造化面接には、調査対象者の数に制限がある、研究者の主観が入りやすい、分析に時間がかかる、回答者の負担が大きい、偏りが生じる可能性があるというデメリットが存在します。
半構造化面接で収集したデータの分析方法
質的研究における半構造化面接で収集したデータを分析する方法には、以下のような手順があります。
- テキストデータの整理 半構造化面接で収集したテキストデータを、調査テーマや質問項目などに基づいて整理します。具体的には、質問項目ごとにデータを分類し、同じ主題のデータをまとめるなどの作業が含まれます。
- テキストデータの読解 テキストデータを読解することで、研究対象となる人々が意図したことや感じたこと、考えていることなどを理解することができます。テキストデータの読解には、コーディングという手法を用いることが一般的です。コーディングとは、テキストデータを細かく分類し、各分類に対してラベルを付ける作業です。コーディングによって、研究対象となる人々が述べた発言を、研究者が理解しやすくなります。
- テキストデータの分析 テキストデータを分析することで、研究対象となる人々が持つ考え方や価値観、行動パターンなどを把握することができます。テキストデータの分析には、主題分析、類型分析、パターンマッチング、グラウンデッド・セオリー法などの手法があります。これらの手法を用いることで、研究対象となる人々が述べた発言の意味を把握し、洞察を得ることができます。
- 結果の報告 分析結果をまとめ、研究結果として報告します。研究目的や研究問題に基づいて、分析結果を整理し、結果をグラフや表などで可視化することもあります。報告の形式は、研究の目的や対象によって異なりますが、分析結果を分かりやすく伝えることが重要です。
主題分析について
主題分析は、質的データの分析手法の一つであり、大量のテキストデータから共通の主題を抽出するための手法です。主題分析は、研究者が先に決めた事前の枠組みを用いずに、データから自然に主題を発見する手法として知られています。
主題分析においては、次のような手順で分析を行います。
- データの整理 まず、半構造化面接などで収集したテキストデータを整理し、共通のテーマにまとめます。この時、研究対象となるテキストデータを分類し、それぞれにラベルを付けます。
- コンテンツの分類 分類されたテキストデータを分析し、類似した意味を持つデータを同じカテゴリーに分類します。この時、一つのカテゴリーに多くのテキストデータが含まれる場合は、さらにサブカテゴリーに分けることもあります。
- カテゴリーの命名 分類されたカテゴリーに適切なタイトルをつけ、それぞれのカテゴリーに対して命名します。命名には、データの内容に応じた、わかりやすく簡潔な表現を使用することが求められます。
- カテゴリーの検証 分類されたカテゴリーを、研究対象となる人々が話していることに関連するかどうかを検証します。この時、同じカテゴリーに分類されるテキストデータが明確であること、また、カテゴリー同士が重複しないようにすることが重要です。
- テーマの抽出 分類されたカテゴリーを分析し、共通するテーマを抽出します。この時、各カテゴリーが表すテーマを簡潔にまとめ、共通するテーマを抽出することが重要です。
- 結果の報告 主題分析の結果を報告します。報告には、抽出されたテーマや、カテゴリーのタイトル、例文などを示し、分析結果を分かりやすく伝えることが求められます。
テキストデータ分析の主題分析の例
以下に、テキストデータ分析の主題分析の例を示します。
例えば、研究テーマが「オンラインショッピングにおける利用者の意見について」とし、半構造化面接によって収集されたテキストデータを主題分析する場合、次のような手順で分析を行うことができます。
- データの整理 まず、収集されたテキストデータを整理し、質問項目ごとに分類します。例えば、以下のような質問項目があるとします。
- オンラインショッピングを利用する理由は何ですか?
- オンラインショッピングで商品を選ぶ際に重視する点は何ですか?
- オンラインショッピングで買い物をする上でストレスを感じる点は何ですか?
- コンテンツの分類 分類されたテキストデータを分析し、類似した意味を持つデータを同じカテゴリーに分類します。例えば、「オンラインショッピングを利用する理由は何ですか?」という質問項目に対する回答の中から、「便利さ」「在宅でできること」「品揃えの豊富さ」といった意見が多く出てきた場合、それらを同じカテゴリーに分類します。
- カテゴリーの命名 分類されたカテゴリーに適切なタイトルをつけ、それぞれのカテゴリーに対して命名します。例えば、「便利さ」「在宅でできること」「品揃えの豊富さ」といったカテゴリーに対して、「利便性」「利用場所の自由度」「商品の種類」といったタイトルをつけることができます。
- カテゴリーの検証 分類されたカテゴリーを、研究対象となる人々が話していることに関連するかどうかを検証します。この時、同じカテゴリーに分類されるテキストデータが明確であること、また、カテゴリー同士が重複しないようにすることが重要です。
- テーマの抽出 分類されたカテゴリーを分析し、共通するテーマを抽出します。例えば、「利便性」「利用場所の自由度」「商品の種類」といったカテゴリーが該当します。
主題分析のメリットとデメリット
主題分析のメリットは以下の通りです。
- テキストデータの特徴を把握できる 主題分析によって、テキストデータに含まれる特定のトピックやパターンを明らかにすることができます。これにより、テキストデータに含まれる情報を的確に把握し、データの特性を理解することができます。
- 大量のテキストデータを扱える 主題分析は、大量のテキストデータを扱うことができるため、ビッグデータ分析にも適しています。これにより、多様な分野での調査や分析が可能となります。
- 可視化がしやすい 主題分析によって得られたデータは、グラフやチャートなどの可視化がしやすいため、わかりやすい結果を得ることができます。これにより、簡単にデータの傾向やパターンを把握することができます。
一方、主題分析のデメリットは以下の通りです。
- 精度に限界がある 主題分析は、人工知能の自然言語処理技術に依存するため、精度に限界がある場合があります。また、テキストデータに含まれる文脈や意味の理解に課題がある場合があります。
- 主観的な要素がある 主題分析は、研究者がトピックやキーワードを選択するため、主観的な要素がある場合があります。また、トピックの定義やキーワードの選択が統一されていない場合、結果の比較や分析が難しくなることがあります。
- 時間やコストがかかる 主題分析は、適切なトピックやキーワードを選択するために、時間やコストがかかる場合があります。また、大量のテキストデータを扱う場合、コンピュータの処理能力が必要となるため、コストがかかる場合があります。
テキスト分析における類型分析
質的調査のテキスト分析における類型分析は、大量のテキストデータから、パターンをもつデータをまとめ、それらを一つの類型として抽出する手法です。類型分析は、テキストデータを効率的に分析する手法であり、定量的な分析手法と組み合わせることで、より深い洞察を得ることができます。
類型分析の手順は以下のようになります。
- データの整理 まず、分析対象のデータを整理します。質的データの場合、テキストデータをテーマ別に整理することが多いです。この際、同じテーマのデータを一つにまとめ、その特徴を把握します。
- コンテンツの分類 データを分析し、似たようなパターンを持つデータを同じグループに分類します。この際、グループを適切に区別し、共通点や相違点を明確にします。グループを形成する基準には、様々な要素が考えられますが、研究者が選んだ要素に基づいてグループを形成します。
- 類型の抽出 分類されたグループを研究者が再検討し、それらを一つの類型として抽出します。類型は、共通の特徴を持ち、同じタイプのパターンを示すデータをまとめたものであり、研究者が先入観を持たずに分析結果から自然に導き出されるものです。
- 類型の命名 抽出された類型に対して、適切な名称をつけます。類型の名称は、グループを形成する基準や、データの特徴に基づいて、わかりやすく簡潔な表現を用いることが重要です。
- 類型の検証 抽出された類型が、研究対象となる人々が話していることに関連するかどうかを検証します。この時、類型に含まれるデータが明確であること、また、類型同士が重複しないようにすることが重要です。
テキスト分析における類型分析の例
以下に、質的調査のテキスト分析における類型分析の例を示します。
例えば、研究テーマが「オンラインショッピングにおける利用者の意見について」とし、アンケート調査によって収集されたテキストデータを類型分析する場合、次のような手順で分析を行うことができます。
- データの整理 まず、収集されたテキストデータを整理し、質問項目ごとに分類します。例えば、以下のような質問項目があるとします。
- オンラインショッピングを利用する理由は何ですか?
- オンラインショッピングで商品を選ぶ際に重視する点は何ですか?
- オンラインショッピングで買い物をする上でストレスを感じる点は何ですか?
- コンテンツの分類 分類されたテキストデータを分析し、類似した意味を持つデータを同じカテゴリーに分類します。例えば、「オンラインショッピングを利用する理由は何ですか?」という質問項目に対する回答の中から、「便利さ」「在宅でできること」「品揃えの豊富さ」といった意見が多く出てきた場合、それらを同じカテゴリーに分類します。
- カテゴリーの命名 分類されたカテゴリーに適切なタイトルをつけ、それぞれのカテゴリーに対して命名します。例えば、「便利さ」「在宅でできること」「品揃えの豊富さ」といったカテゴリーに対して、「利便性」「利用場所の自由度」「商品の種類」といったタイトルをつけることができます。
- カテゴリーの検証 分類されたカテゴリーを、研究対象となる人々が話していることに関連するかどうかを検証します。この時、同じカテゴリーに分類されるテキストデータが明確であること、また、カテゴリー同士が重複しないようにすることが重要です。
主題分析と類型分析の違い
主題分析と類型分析は、質的研究におけるテキストデータ分析の手法の一つですが、それぞれ異なるアプローチを取ります。
主題分析は、テキストデータから共通するテーマやトピックを抽出する手法であり、各文書や発言を個別に分析することに重点を置きます。主題分析は、テキストデータを読み取ることによって、主題やトピックのパターンを発見することを目的としています。主題分析では、テキストデータの中で共通する単語やフレーズを検索し、そのパターンを抽出することによって、共通するテーマを発見します。
一方、類型分析は、大量のテキストデータから、パターンをもつデータをまとめ、それらを一つの類型として抽出する手法であり、データをグループ化することに重点を置きます。類型分析は、テキストデータのパターンを明確にすることによって、データを効率的に分析することを目的としています。類型分析では、似たようなパターンを持つデータを同じグループに分類し、それらを一つの類型として抽出します。
主題分析と類型分析は、異なるアプローチを取っていますが、両方の手法は、質的研究におけるテキストデータ分析において重要な手法です。主題分析は、テキストデータからテーマやトピックを発見することに適しています。類型分析は、データをグループ化することに適しており、効率的な分析を行うことができます。
類型分析のメリットとデメリット
類型分析のメリットは以下の通りです。
- 現象の特徴を把握できる 類型分析によって、テキストデータに含まれる特定の現象やパターンを明らかにすることができます。これにより、テキストデータに含まれる情報を的確に把握し、データの特性を理解することができます。
- 比較が容易 類型分析によって得られた類型は、各々の特徴を把握することができるため、比較が容易です。また、類型の数や類型の特徴を比較することにより、研究結果の解釈がしやすくなります。
- 精度が高い 類型分析は、統計学的な手法に基づいて分析するため、精度が高いという特徴があります。
一方、類型分析のデメリットは以下の通りです。
- 分析に多くの時間と労力が必要 類型分析は、適切な類型を作成するために多くの時間と労力が必要となるため、研究の進捗が遅れる場合があります。
- 主観的な要素がある 類型分析は、研究者が選択した変数に基づいて分析するため、主観的な要素がある場合があります。また、分析に用いる変数の選択が不適切な場合、分析結果が偏る可能性があります。
- 一般化が難しい 類型分析は、特定の現象やテキストデータに基づいて分析するため、一般化することが難しい場合があります。そのため、研究の信頼性を高めるためには、より多様なデータを収集する必要がある場合があります。
テキストデータ分析におけるパターンマッチング
テキストデータ分析において、パターンマッチングは、あらかじめ用意されたパターンと、対象となるテキストデータを比較し、一致する箇所を検出する手法です。パターンマッチングは、機械学習や自然言語処理の分野で広く用いられています。
具体的には、パターンマッチングは、以下のような手順で行われます。
- パターンの準備 まず、分析対象となるパターンを用意します。パターンは、あらかじめ定義されたテキストデータ、キーワード、正規表現など、様々な形式で用意することができます。
- マッチングの実行 パターンマッチングを行うために、テキストデータをパターンと比較します。テキストデータの中から、パターンに一致する箇所を検出することができます。一致する箇所が複数ある場合は、それらを全て検出することができます。
- パターンの検証 一致した箇所が正しいかどうかを検証します。パターンが複数ある場合は、それらを優先順位付けし、正しいパターンを選択します。また、パターンが誤検出されることがあるため、検出された箇所を目視で確認することが重要です。
- 結果の報告 パターンマッチングの結果を報告します。報告には、一致した箇所や、パターンの詳細情報、誤検出があった場合はその修正案などを含めます。
パターンマッチングは、大量のテキストデータを分析する場合に有用であり、テキストデータから特定のパターンを抽出することができます。例えば、商品名や地名、人名などの特定の情報を検出する場合に利用することができます。しかし、パターンマッチングは、あらかじめ用意されたパターンしか検出できないため、新しいパターンに対応するためには、新たにパターンを追加する必要があることに注意が必要です。
テキスト分析におけるパターンマッチングの例
テキスト分析におけるパターンマッチングの例として、スパムメールの自動フィルタリングが挙げられます。スパムメールの自動フィルタリングは、テキスト分析の一種であり、パターンマッチングを用いて実現されています。
スパムメールの自動フィルタリングでは、あらかじめ定義されたスパムメールの特徴やパターンを用いて、スパムメールを自動的に検出します。例えば、以下のようなスパムメールのパターンがあるとします。
- 「無料」「キャッシュバック」「限定」などの言葉が多く含まれている。
- 送信元アドレスがランダムな文字列や明らかにスパムの可能性があるドメインである。
これらのパターンを用いて、スパムメールの自動フィルタリングを行います。具体的には、メールの本文や送信元アドレスを分析し、スパムメールのパターンと一致する箇所を検出します。一致する箇所がある場合は、そのメールをスパムメールとして自動的にフィルタリングすることができます。
また、スパムメールのパターンは、新しいスパムメールが出現するたびに更新されます。スパムメールの自動フィルタリングシステムは、新しいスパムメールのパターンを収集し、既存のパターンに追加することで、常に最新のスパムメールを検出することができます。
パターンマッチング分析のメリットとデメリット
パターンマッチング分析のメリットは以下の通りです。
- 高精度な分析が可能 パターンマッチング分析は、膨大なデータから特定のパターンを検出するため、高精度な分析が可能です。また、機械学習のアルゴリズムを用いることで、より精度の高い分析を行うことができます。
- パターンの発見が容易 パターンマッチング分析によって、データの中から予想外のパターンやトレンドを発見することができます。これによって、新しいアイデアやビジネス戦略の発見が可能となります。
- 自動化が可能 パターンマッチング分析は、機械学習のアルゴリズムを用いることで自動化が可能です。これにより、人間の手作業に比べて効率的に分析を行うことができます。
一方、パターンマッチング分析のデメリットは以下の通りです。
- データ品質の影響を受ける パターンマッチング分析は、データ品質に影響を受けるため、精度に限界があります。また、データ品質が低い場合、結果の信頼性が低下することがあります。
- 訓練データの選択が重要 パターンマッチング分析は、機械学習のアルゴリズムを用いて分析を行うため、訓練データの選択が重要となります。不適切な訓練データを用いると、分析結果が偏ったものになってしまう可能性があります。
- 解釈が困難な場合がある パターンマッチング分析によって得られた結果が、人間にとって解釈が困難な場合があります。また、得られた結果から何らかの行動を起こす場合、その判断が誤ったものになってしまう可能性があるため、注意が必要です。
テキストデータ分析におけるグラウンデッド・セオリー法について
グラウンデッド・セオリー法は、質的研究におけるテキストデータ分析の手法の一つであり、理論構築の手法の一つでもあります。グラウンデッド・セオリー法は、データから理論を構築することに重点を置き、研究者の事前の仮説や予測に頼ることなく、データに基づいて理論を構築します。
グラウンデッド・セオリー法は、以下の手順で実施されます。
- データ収集 最初に、対象とするテキストデータを収集します。例えば、インタビューのテキストデータやフィールドノートなどを収集することがあります。
- データの読み込み 収集したテキストデータを、何度も繰り返し読み込みます。データの読み込みを通じて、テキストデータのパターンやトピックを特定し、新しいアイデアを発見します。
- コード化 データの読み込みを通じて、パターンやトピックを特定したら、それらをコード化します。コード化とは、データに関連するラベルやカテゴリーを割り当てることです。コード化によって、テキストデータの特徴を把握し、データの構造を明確にすることができます。
- コードの統合 コードを統合することで、共通のパターンやトピックを持つコードをまとめることができます。コードの統合によって、データの構造を整理し、分析を効率的に行うことができます。
- 理論構築 最後に、コードを分析し、共通するパターンやトピックを抽出し、それらを組み合わせて理論を構築します。理論構築によって、データから新しい知識や理解を得ることができます。
グラウンデッド・セオリー法は、データから理論を構築するため、研究者の事前の仮説や予測に頼ることなく、データに基づいて理論を構築することができます。しかし、グラウンデッド・セオリー法は、データの収集や分析に多くの時間と労力を要します。
グラウンデッド・セオリー法の例
グラウンデッド・セオリー法の例として、フェミニズム研究の分野で行われた研究があります。この研究では、女性が経験するセクシャルハラスメントについて、インタビュー調査を行い、グラウンデッド・セオリー法を用いて分析しました。
研究では、インタビューで収集されたテキストデータを分析し、以下のようなパターンが見出されました。
- パターン1: “セクシャルハラスメントが起こる状況” 受訪者がセクシャルハラスメントを経験する状況は、仕事場や学校などの公共の場だけでなく、プライベートな場所でも起こり得ることがわかった。
- パターン2: “セクシャルハラスメントの種類” 受訪者が経験したセクシャルハラスメントの種類には、性的なコメントやジェスチャー、性的な接触や追跡などがあることがわかった。
- パターン3: “セクシャルハラスメントに対する対処法” 受訪者がセクシャルハラスメントに対処する方法として、自分で問題を解決する方法や、上司や教師などの上位者に相談する方法があることがわかった。
以上のように、グラウンデッド・セオリー法を用いることで、収集されたデータから、セクシャルハラスメントに関する新たな知見が得られました。この研究では、事前の仮説や予測に頼らず、データから理論を構築することで、より客観的かつ信頼性の高い研究結果が得られたと言えます。
グラウンデッド・セオリー法のメリットとデメリット
グラウンデッド・セオリー法のメリットは以下の通りです。
- 理論の信頼性が高い グラウンデッド・セオリー法は、データに基づいて理論を構築するため、事前の仮説や予測に頼らず、より客観的かつ信頼性の高い理論を構築することができます。
- 新しい知見を得られる グラウンデッド・セオリー法は、データから新しい知見を得ることができるため、研究の価値を高めることができます。
- 柔軟性がある グラウンデッド・セオリー法は、データから理論を構築するため、理論の構築過程で常に修正や改善が行われるため、柔軟性があるという特徴があります。
一方、グラウンデッド・セオリー法のデメリットは以下の通りです。
- 分析に多くの時間と労力が必要 グラウンデッド・セオリー法は、データの収集や分析に多くの時間と労力が必要であるため、研究の進捗が遅れる場合があります。
- 研究者の主観性が影響する可能性がある グラウンデッド・セオリー法は、データから理論を構築するため、研究者の主観性が影響する可能性があるというデメリットがあります。
- 一般化が難しい グラウンデッド・セオリー法は、データから得られた理論は、そのデータに基づいて構築されたものであり、一般化することが難しい場合があります。そのため、研究の信頼性を高めるためには、より多くのデータを収集する必要がある場合があります。